コラム

【完全保存版】平均賃金の具体的な計算方法【ケース別詳細】

のびのび幸福になる労働相談室長のnobisukeです。

平均賃金という言葉を聞いたことはありますか。

仕事をしていると様々な場面でこの平均賃金を計算しなければならなくなることがあります。

そんなに難しい計算ではないのですが、労働者の置かれた状況によって様々な計算方法が存在します。

そのケースは膨大で全てを網羅することは不可能ですが、今回はこれくらい網羅しておけば大体のケースで対応できるであろう計算方法について具体的に紹介しますので、参考にしてください。

コンパクトな記事にしたかったのですが、思いがけずボリュームが多くなってしまったので、目次を参考に、ご自身の場合に該当する部分からご覧下さい。

目次

なぜ平均賃金を計算しなければいけないのか

仕事をしていると様々な問題が発生します。

例えば、解雇されたり、怪我をして休業を余儀なくされたり。

そういった際に、あなたの最低限の生活を守るために様々な制度が法律で定められています。

解雇予告手当

労働基準法
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
3 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

使用者の責に帰すべき事由による休業の手当

労働基準法
第二十六条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合の手当

労働基準法
(療養補償)
第七十五条 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
2 省略
(休業補償)
第七十六条 労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。
2 省略
3 省略
(障害補償)
第七十七条 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり、治つた場合において、その身体に障害が存するときは、使用者は、その障害の程度に応じて、平均賃金に別表第二に定める日数を乗じて得た金額の障害補償を行わなければならない。
(遺族補償)
第七十九条 労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、遺族に対して、平均賃金の千日分の遺族補償を行わなければならない。
(葬祭料)
第八十条 労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、葬祭を行う者に対して、平均賃金の六十日分の葬祭料を支払わなければならない。

ただし、通常の場合は日本で労働者を雇用している事業主は全て労災保険に加入しているため(事業主が手続きを怠っていても労働者は労災保険法の補償を受けることができる。)上記の労働基準法第75条から法第80条の責任を負わずに労働者災害補償保険法(労災保険)が適用されることになります。

労働基準法
第八十四条 この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる。
2 使用者は、この法律による補償を行つた場合においては、同一の事由については、その価額の限度において民法による損害賠償の責を免れる。

労災保険により国から補償がされる場合も、その補償内容は基本的には平均賃金から算出することになっています。

あなたの最低限の生活を補償する為に、これらの制度が法律で定められており、その具体的な金額を算出するためにあなたの平均賃金を計算しなければならないのです。

原則的な平均賃金の具体的計算方法

平均賃金の計算方法は基本的なものであれば実はそれほど難しいことはありません。

原則的な平均賃金計算方法は労働基準法第12条に定められています。

労働基準法
第十二条 この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。ただし、その金額は、次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。
一 賃金が、労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の百分の六十
二 賃金の一部が、月、週その他一定の期間によつて定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前号の金額の合算額
2 前項の期間は、賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する。
3 前二項に規定する期間中に、次の各号のいずれかに該当する期間がある場合においては、その日数及びその期間中の賃金は、前二項の期間及び賃金の総額から控除する。
一 業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間
二 産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業した期間
三 使用者の責めに帰すべき事由によつて休業した期間
四 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号)第二条第一号に規定する育児休業又は同条第二号に規定する介護休業(同法第六十一条第三項(同条第六項において準用する場合を含む。)に規定する介護をするための休業を含む。第三十九条第八項において同じ。)をした期間
五 試みの使用期間
4 第一項の賃金の総額には、臨時に支払われた賃金及び三箇月を超える期間ごとに支払われる賃金並びに通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないものは算入しない。
5 賃金が通貨以外のもので支払われる場合、第一項の賃金の総額に算入すべきものの範囲及び評価に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。
6 雇入後三箇月に満たない者については、第一項の期間は、雇入後の期間とする。
7 日日雇い入れられる者については、その従事する事業又は職業について、厚生労働大臣の定める金額を平均賃金とする。
8 第一項乃至第六項によつて算定し得ない場合の平均賃金は、厚生労働大臣の定めるところによる。

法律の条文だとなんだかよくわかりませんね。

実際の行政機関で最も平均賃金を計算する機会が多いのは労災保険の休業補償給付です。

労災保険の休業補償給付を国に請求する際の請求書は「様式第8号用紙」といわれ、様式第8号の別紙として「平均賃金算定内訳」という用紙があります。

この「平均賃金算定内訳」 を使って計算するのが一番簡単です。

様式第8号はこちらからダウンロードできます。

そして、実際の記入例がこちらです。

画像が小さくで見づらい場合はこちらのリンクから直接ご覧ください。

「厚労太郎」さんは月給日給制で給料をもらっていて、給料の締め日は月末締めです。

毎月30万円の基本給と1万2千円と1万円の手当てをもらっています。

残業が発生しており、各月に残業に見合った残業手当をもらっています。

今回は5月15日に労災事故が発生してしまったようです。

では、この「厚労太郎」さんの記入例に沿って具体的に見ていきましょう。

算定の期間

平均賃金を計算するためにどの期間をとればいいかというと、「算定すべき事由の発生した日」以前3ヶ月間と決められています。

そして、「算定すべき事由の発生した日」の直前の締切日から計算することになっています。

ではケースごとにこの「算定すべき事由の発生した日」はいつになるかまとめます。

解雇予告手当

解雇を通告された日

使用者の責に帰すべき事由による休業の手当

その休業させられた日(2日以上の期間であるときは最初の日)

労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合の手当

負傷した日、疾病の場合は診断が確定した日

「厚労太郎」さんは5月15日に負傷してしまったので「算定すべき事由の発生した日」は「5月15日」となり、その直前の賃金締切日である「4月30日」からさかのぼること3ヶ月間の3回の賃金締め切り期間で平均賃金を計算することになります。

  • 2/1から2/28
  • 3/1から3/31
  • 4/1から4/30

この3回の賃金締め切り期間で平均賃金を計算します。

平均賃金算定内訳の「A」欄と「B」欄

平均賃金算定内訳には「A」の記入欄と「B」の記入欄があります。

これは記入例にもありますが、原則的な平均賃金の算定の下にある「最低保障平均賃金」を計算するために必要なものです。

  • 「A」には月、週、その他一定の期間で定められている賃金を記入します。具体的には月給者の基本給、職務手当、家族手当、月で固定の通勤手当等です。
  • 「B」には日、時間、出来高等の実績により支払われる賃金を記入します。日給者や時給者の基本給、残業手当、休日出勤手当、深夜手当、1日毎に計算される通勤手当等です。
  • 「総日数」の欄には暦の日数を記入し、「労働日数」の欄は実際に労働した日数を記載してください。
  • 「労働日数」はあくまでも「日数」でカウントしてください、4時間勤務でも8時間勤務でも「1日」です。
  • 深夜0時をまたいで勤務している場合でも、それが1回の勤務である場合は「1日」とカウントします。

賃金や労働日数に含めいていいか迷うもの

通勤手当

通勤手当ては賃金ですので算入します。

通勤定期券代も算入しますが、6ヶ月分まとめて支払いされたような場合は、該当する月で割り戻しそれぞれの月の賃金として算入します。

有給休暇

有給休暇を取得した日は労働したものとみなし、その日に対して支払われた賃金も含めます。

副業

最近は副業が流行りつつありますが、現在の法制上副業は考慮されておらず、算定事由が発生した会社の給料でのみ平均賃金を算定することになっています。

マイカーや自分の電話を利用したことに対する実費弁償

仕事にマイカーや自分の電話を利用したことに対する実費弁償分は賃金には含まれません。

臨時に支払われた賃金

私傷病手当、加療見舞金、退職手当、寒冷地手当などの臨時に支払われたものは平均賃金には含めません。

賞与(ボーナス)

賞与は平均賃金には含めません。

ここまでの説明で、通常の常用労働者全体の8割程度の方の平均賃金は計算できるはずです。

あとは、記入例のように項目に期間や賃金、手当を当てはめて、算定内訳に書いてあるとおりに計算すればいいだけです。

そんなに難しくないですよね。

ケース別例外的な算定方法

原則的な平均賃金については紹介した通りで、そんなに難しくはありません。

しかし、実際の労働者の働き方に合わせ、平均賃金を計算しようと思うと実に多くのケースがあり、すべてを網羅することは非常に困難です。

ただし、これからまとめる方法によれば、すべてはカバーできませんが、ある程度のケースに対応することができます。

算定期間の例外

賃金締切日に算定事由が発生した場合

賃金締切日に算定事由が発生した場合は、その日は含めずに、さらに1ヶ月前の賃金締切日から計算します。

手当によって締切日が違う場合

手当毎で賃金締切日が違う場合は、それぞれの締切日で計算します。

算定期間中に賃金締切日が変更になった場合

算定期間中に賃金締切日の変更があった場合は、算定期間の取り方がわからなくなりそう(賃金締め切り期間を3つとればいいのか4つとればいいのか)ですが、その場合は3ヶ月の暦日日数に一番近くなるような賃金締め切り期間の取り方をしてください。

雇い入れから3ヶ月未満の場合

雇い入れから3ヶ月未満で算定事由が発生した場合でも、雇い入れから直前の賃金締切日までで算定すればいいのですが、そのようにすると算定期間が1賃金締切日に満たなくなる(1ヶ月より短くなる)場合は、雇い入れから算定事由発生日の前日までで計算することになります。

雇い入れから2週間未満で全日出勤している場合

雇い入れから2週間未満で算定事由が発生し、全日出勤していた場合は、このまま計算すると正しい平均賃金が計算できませんので、雇い入れから算定事由発生日前日までの賃金を暦の日数で割って、6/7をかけて算出します。

雇い入れた当日に算定事由が発生した場合

雇い入れ当日に算定事由が発生した場合は、あらかじめ一定の賃金が定められている場合が大半だと思いますので(通常は給料が不明のまま働かない)その額から一日の賃金額を推算し、予定されていた稼働率を計算して算出します。

予定されていた稼働率が明らかではない場合は、2週間未満のときの事例を準用して6/7をかけて算出します。

例外的に除外する賃金と日数

平均賃金を算定する期間中に次の場合に該当する期間がある場合は算定期間から除外します。
分母である暦日数から該当する日数を減らすということです。

業務上の傷病による休業期間

 

産前産後の休業期間

 

使用者の責に帰すべき事由による休業期間

仕事がなくて休ませた場合などかこれに該当します。
この間にに支払われた休業手当ももちろん控除して計算します。

育児休業、介護休業期間

 

試用期間

 

使用者の責に帰すべからざる事由による休業期間

天災による操業停止などで休業した場合等がこれにあたります。

組合専従期間

 

これらの他に業務上の負傷や疾病により、労災保険の給付を受ける場合の基礎額(給付基礎額といいます)を計算するために平均賃金を算出する場合は特例として以下の場合も控除します。

  • 業務外の事由による負傷や疾病の療養のための休業期間
  • 親族の負傷や疾病の看護のための休業期間

 

常用労働者に関する特例計算

通常の場合は今までの計算方法で算出できる場合がほとんどと思われます。

これから紹介するケースはかなりイレギュラーな場合の算定であり、実際にはあまりないケースかもしれません。

試用期間中に算定事由が発生した場合

試用期間は算定期間から除外することになっていました。

しかし、そうすると試用期間中に平均賃金を算定しなければいけなくなった場合に計算することができません。

ですので、そんなときは試用期間中の賃金と日数で計算していいことになっています。

控除期間が過去3ヶ月以上にわたる場合

先程紹介した、業務上の傷病による休業期間などの例外的に算定期間から除外する期間が、平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前3ヶ月以上になる場合、算定期間が全くなくなってしまい原則通り計算することは不可能です。

そういった場合は、この控除期間の最初の日を平均賃金を算定するべき事由の発生した日とみなして計算することになっています。

控除期間の直後に平均賃金を計算しなければいけない場合

既に説明したような、業務上の傷病による休業期間や試用期間のような控除期間が終了したすぐあとに平均賃金を計算しなければいけない場合は、直前の賃金締切日から計算しようとすると算定する期間がなくなってしまうので、休業期間や試用期間が終了した、控除期間後から算定事由が発生した日までの日数と賃金で計算することになります。

完全月給制や手当(欠勤しても減額されないもの)が支給される場合で、算定期間が1賃金締め切り期間ない場合

  1. 減額されない基本給や手当を「30」で割って算出します。
  2. その他の、日、時間、実績により支給される手当もある場合はこれを原則的方法により算出します。

①と②を合計したものが平均賃金になります。

月給日給制の例外的な最低保障額

月給日給制とは、通常の月給制なのですが、欠勤した場合に一定の金額(日額)を減額する制度のことです。通常の月給制の方と思ってもらえればいいです。

月給制で算定期間中に欠勤が多い場合は平均賃金が不当に低くなってしまうため、最低保障額が定められています。欠勤の理由は問いません。

欠勤の理由は問わないと申し上げましたが、通常、負傷や疾病による休業や会社の責任の休業については、既に説明したような控除期間に該当するため今回の話にはなりません。

理由が不明な自己都合欠勤や、既に説明したような理由以外の欠勤が多い方はこの例外規定により救済します。

  1. 欠勤により減額された賃金のうち、全く欠勤しなかったら支給されていたであろう月毎の賃金(内訳の「A」)/所定労働日数(出勤するはずだった日)×60/100
  2. 日や時間その他実績による賃金(内訳の「B」)/実際に労働した日×60/100
  3. 欠勤しても減額されなかった賃金(内訳の「A」)/暦の日数

①+②+③が最低保障額になりますので、原則的な方法で算出した平均賃金がこの額を下回った場合はこの最低保障額が平均賃金になります。

まとめ

今回は原則的な平均賃金の算出方法と、少し特殊な場合の平均賃金の算出方法をケース毎にまとめました。

思いがけずボリュームが多くなってしまいましたが、それでもまだ全ては網羅できていません。

給料を通貨ではなく実物で支払う場合、そもそも賃金額が不明な方の算出、日雇いの労働者の算出の仕方など、平均賃金の算出方法にはまだまだたくさんのケースが存在します。

しかしながら、今回ご紹介した方法によれば、ほとんどの方の平均賃金が計算できると思います。

また、労災保険の補償の場合は、この他に更に最低保障額が設定されているケースもありますのでまた機会があったらご紹介できればと思います。